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編集部員が本音で語った! 第101回 オール讀物新人賞への道

編集部員が本音で語った! 第101回 オール讀物新人賞への道

文:「オール讀物」編集部


ジャンル : #歴史・時代小説

どんな作品が新人賞に求められているか

 多くの編集者は、興味を惹かれる設定か、キャラクターが立っているか、ストーリー展開が面白いかの3つの視点で原稿を読んでいると思います。その3点がきちんと出来ていたうえで、独自のテーマが浮かび上がればなお良いのではないでしょうか。

 私も、原稿を読むときに表にして「キャラクターは何点で」とかにはしないけれど、その4点を評価ポイントにしています。

 歴史時代小説の場合、設定で個性を出せるのも大きな特徴だと思います。

西 たとえば、誰もが知っている織田信長を書いたとしても、こういう描き方をするのかと唸らされると高評価ですし、ほとんど知られていない面白い人物を見つけてきた場合も「こんな人がいたんだ」と評価が上がりやすくなりますね。

 それこそ、木下昌輝さんは『炯眼に候』で信長をテーマにしていますが、周囲から信長を描くことで木下さんにしか作り出せない信長像になっている。時代小説だと坂井希久子さん(第88回、2008年)が現在執筆されている連作「江戸彩り草子」シリーズの主人公の仕事は、現代でいえばカラーコーディネーター。もし江戸時代にこんな職業があったらという視点が新しいし楽しいですね。

『炯眼に候』(木下 昌輝)

西 僕は毎年オール讀物11月号に掲載される新人賞の選評を読むのもいいんじゃないかと思います。傾向と対策を学ぶという意味ではなく、選考委員は小説をこういう視点で読んでいるんだと知ることで、自分の作品に足りないところや、さらにレベルアップさせられる部分が分かるんじゃないでしょうか。昨年受賞された高瀬乃一さんは、3度目の最終候補で受賞されましたが、「選評を読んで、次に乗り越えるべき壁がどういったものか知ることができた」というようなことをおっしゃっていました。

 坂井希久子さんも何度か最終候補に挙がっての受賞でしたが、小説家講座に通っていた時期に、毎回他の方が書かれた作品の選評を自分の次の応募作に活かしたとインタビューで答えていましたね。

 あとは、色んな本を読むことも大切だと思います。歴史小説の場合は、文献を読み解く力が必要ですし、それによってディテールを面白くできる。また、小説をたくさん読むことで、自分が書く作品を客観視もできるようになる。

 歴代のオール讀物新人賞受賞者では、宇江佐真理さん(第75回、1995年)の「髪結い伊三次捕物余話」や、山本一力さん(第77回、1997年)の「損料屋喜八郎始末控え」シリーズなど、受賞作もしくは、受賞後すぐに生み出したシリーズがいまも愛される作品になっています。こうした歴代の受賞者に続く未来の作家の登場を期待しています!

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