応募作は本当に読まれているの?
長 今回の新人賞のリニューアルにあたり、もう一つ大きく変えたのは応募をWEBに限った点です。もちろん手書きの良さはわかっているけれど、いまや小説家とのやり取りはメールやPDFが主流。これからプロとしてやっていくことを考えると、原稿やゲラのやり取りはオンラインで進めることが必要になることもふまえました。
西 個人的には応募原稿の体裁にも気を配ってほしいと思ってます。たとえば行間が広すぎたりするとどうしても読みにくくなりますし。
長 ある作家に聞いたことがあるんですが、初めて新人賞に応募した際、既定の文字数に収まらないので句読点も入れずに提出したところ、その時は一次選考にも引っかからなかったとか……気持ちは分からないでもないけれど、改行も含めて規定枚数に収めてほしい。オール讀物歴史時代小説新人賞の規定枚数は80枚ですが、たとえば、選考委員の安部龍太郎さんの『海の十字架』や門井慶喜さんの『ゆけ、おりょう』、畠中恵さんの「まんまこと」シリーズなどは、原稿規定と同じ80枚の短編小説が6編くらいで1冊になっている。こういった短編集も参考になると思いますよ。
山 改行についても文章のテンポを決める要素のひとつだから、新人賞原稿では、「この人はどこで改行するのか」というのも含めて私は読んでいます。
西 誤字脱字は気になりますか?
長 私自身、誤字脱字が多いほうなのでそこまで気にならない(笑)。
山 誤字脱字を指摘するのも編集者の仕事だと考えているので、そこはさほど気にはならないですよね。ただ、あまりに誤字脱字が多いと、冷静に自分の作品を読み直せてるのかと思うこともあります。
長 毎年、「誤字脱字があるので新しい原稿に差し替えられませんか」という問い合わせをいただくのですが、多少の瑕疵は気にしていません。また何作も投稿していただくのはルール上はOKですが、推敲も含めて一作入魂という気持ちで執筆したほうが良い結果が出やすいんじゃないかと思います。
西 やはり何作も推敲して高いレベルにするのって、時間もかかりますしね。僕は5年ぶりにオール讀物編集部に戻ってきたんですけど、応募原稿すべてを編集部員に割り振って読んでいくというのは変わってないんですか?
長 変わってないですね。締切の6月20日以降、全作品を必死で読むことになります。
山 編集者の喜びのひとつは、その作品の最初の読者になることなんですね。それは応募原稿でも変わらないので、全作品真摯に読みますし、素晴らしい作品に出会えるのを楽しみにしています。
長 たとえ受賞までいたらなくとも、良い作品を書いた人のことはけっこう覚えてますね。
山 そうそう。その方が他社の新人賞でデビューされたときは、嬉しいと同時に、悔しさも感じます。
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