皆さんこんにちは!
いよいよ3日(日)、『追憶の烏』刊行記念、ネタバレOKオンライントークイベントが開催されます! 何度やっても生配信は緊張しますが(しかも今回はアーカイブまで残ってしまうという……)少しでもお楽しみ頂けるように頑張るつもりですので、ご参加頂ける皆様、何卒よろしくお願いいたします!
そしてそして、度重なる告知で申し訳ないのですが、10月6日には文春文庫から猫をテーマにしたアンソロジー、『猫はわかっている』が発売されます。私がオール讀物2021年5月号に寄稿した短編、「50万の猫と7センチ」も収録して頂いております。他の皆様はちゃんとした小説なのですが「50万の猫と7センチ」は99%実話です。もはや小説ではなくエッセイですね。
このコラムでも何回か取り上げているウチの猫ニャアは、もとは野良猫でした。前に飼っていた愛犬チャチャ丸が死んで以来、空白となった縄張りにのこのこやって来た流れ猫です。「50万の猫と7センチ」は、そんなニャアがペットロス状態だった両親の心の隙間にどっかりと腰を下ろし、まんまと完全室内飼いになってしまうまでの話です。
野良猫同士で餌の取り合いが勃発したり、現代にあるまじき野犬の群れに襲われたり、猫可愛さに目がくらんだ父が色々と空回りするドタバタ劇となっております。ぶっちゃけ阿部家の内情が丸わかりになってしまうのでお恥ずかしい気もするのですが、もしまだオール讀物をご覧になっておらず、ご興味のある方がいらっしゃいましたら手に取って頂ければ幸いです。
ちょっとネタバレしますと、タイトルとなっている「50万」というのは、ニャアが大けがをして入院し、退院するまでにかかった費用の合計です。母からは「ニャアの命には代えられないもの。これは必要経費。それはそれとして、あんたは小説家なんだからニャアをネタにして少しでも取り返しなさい!」と厳命されてしまいました。このコラムでニャアのネタがやたら多いのはそのせいもあります。(まあ、他に語るようなネタがないというのも大きいのですが……)
ニャアはもともと野良だったと言いましたが、正確にはTNR済の猫、その証に耳に切り込み入れられたさくら猫こと地域猫でした。
TNRとはすなわち、野良猫を捕まえて(Trap)、不妊・去勢手術をし(Neuter)、もといた所に戻す(Return)、ということです。それによって、さかりのついた猫の騒音や悪臭問題を解決し、増え続ける野良猫を憎むのではなく、その子一代限りを地域で見守りましょう、という動物愛護活動ですね。色々と議論はあるようですが、私も現実問題を解決するための手段として、TNRには賛成しております。
実はニャアが完全室内飼いになった結果、空白となった縄張りにまた新顔の猫がやって来てしまいました。今は懐かしきロケット鉛筆のようです。この子はニャアと違ってTNRはされていなかったので、我が家で初めてTNRを行いました。
出来ればこの子も室内飼いにしたいのですが、硝子戸越しにニャアとは緊張状態にあるため、どうしたもんかなと頭を悩ませています。この子に関しても色々とエピソードには事欠かないので、もしまた猫特集があるようだったら、(50万の足しにもなるので)是非また一本書かせて頂きたいですね。
阿部智里(あべ・ちさと) 1991年群馬県生まれ。2012年早稲田大学文化構想学部在学中、史上最年少の20歳で松本清張賞を受賞。17年早稲田大学大学院文学研究科修士課程修了。デビュー作から続く著書「八咫烏シリーズ」は累計130万部を越える大ベストセラーに。松崎夏未氏が『烏に単は似合わない』をWEB&アプリ「コミックDAYS」(講談社)ほかで漫画連載。19年『発現』(NHK出版)刊行。「八咫烏シリーズ」最新刊『追憶の烏』発売中。
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