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「なんだそりゃ、と思いますよ」MLBに挑戦する日本人プロ野球選手にイチローが抱く手厳しい“疑問”

「なんだそりゃ、と思いますよ」MLBに挑戦する日本人プロ野球選手にイチローが抱く手厳しい“疑問”

小西 慶三

『イチロー実録 2001-2019』より #2

出典 : #文春オンライン
ジャンル : #ノンフィクション

先人を乗り越えた縁

 7月8日、ツインズのジョー・マウアーが規定打席に達し、リーグ打率首位を自分から奪ったときは、笑みを浮かべて「マウアーなら許す」と言った。「誰がそこにくるか、ですからね。マウアーだったら全然いい。ほかのしょうもない選手だったらカチンとくるけど」。マウアーは高校時代を通じて、公式戦で2度しか空振りをしなかったとの逸話を持つ。そんな天才肌との競争が、イチロー自身の描くストーリーにはまったのか。悔しさは感じさせず、むしろ後半戦の争いが楽しみなようにも見えた。

 7月13日、オールスター前日の午前中、イチローはセントルイス郊外にあるジョージ・シスラーの墓を訪ねた。2004年に自身が破るまで、1920年から80年以上もシーズン最多安打記録を守り続けたシスラーの墓碑には「1973年3月没」の文字がある。その約7カ月後に生まれた彼は、「なにか特別な思いがした」とあらためて感慨を抱いていた。

 セントルイスを訪れるのは2度目、前回は2004年7月の交流戦。その約3カ月後に先人を乗り越えた縁。「2004年に(安打記録更新で)シスラーさんをちょっと起こしちゃって、今回もまた突然起こしてしまった。お休み中にすいません、という感じでしたね」

 

 この日の夜、イチロー夫妻は、郊外のイタリアンレストランでア・リーグの指揮を執るジョー・マドン(当時レイズ監督)と偶然隣り合わせている。「これは俺からだ。明日は1球目から狙ってくれ」と、高級ワインをプレゼントされたア・リーグ1番打者。“指示通り”本番でプレーボール直後の1球目を思い切り引っ張ったが、打球は右ポール近くへの大ファウルだった。

僕らにとって一番良くないのは無関心

 このオールスターゲーム前には、クラブハウスを訪れたバラク・オバマ大統領から、「何でそんなに肩が強いんだ」とたずねられた。試合後会見での彼は、フィールドで味わう興奮とは別種の感情を抑えきれないでいた。「(君の)ビッグファンと言われた。本当かウソか分からないけど、知っていただいていることが僕には驚きだった。感動しました」。いつもの人を食ったような雰囲気は、この日に限ってなかった。

単行本
イチロー実録 2001-2019
小西慶三

定価:1,540円(税込)発売日:2021年10月12日

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