
なぜWBC連覇にイチローのような“劇薬”が欠かせなかったのか
高校ナンバーワン左腕を米球界にみすみす手渡すようなことになれば、プロ野球の空洞化につながりかねない……。当時報じられていた日本球界関係者の危惧と、イチローがWBC連覇後に感じていた日本国内の驕りにも似た空気。その相反する事象に疑問を投げかけた。
「いまメジャーでプレーしている日本人、プロ野球でトップだった人がほとんどでしょう? そんな彼らがここで1年を過ごした後、『充実していた』なんて言っている。これが『情けない』とか『悔しい』なら、日本もちょっとは近づいたかなって思うかもしれませんが、実際はそうじゃない。なんだそりゃ、と思いますよ」
誰よりもヒットを打っているから、首位打者タイトルや200安打は簡単になっていく。そんな安易な発想に反発したのと同じように、日本代表のWBC連続優勝に浮かれた空気に抵抗していた。ヒットを打つことに関して、シーズン単位という中期での最高点をたたき出し、長期では連続年間200安打記録を塗り替えた。守備、走塁を含めて日本人野球選手で誰よりも結果を残した彼が、世界と日本の差を悔しがっている。なぜイチローのような“劇薬”がWBC連覇に欠かせなかったのかが、分かった気がした。
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