- 2023.03.31
- インタビュー・対談
闇を抱えたバディが魅せる「復讐の理」――往年の傑作エンタメ小説が“新しい時代劇”に生まれ変わる! 豊川悦司×片岡愛之助
取材・構成:生島 淳
池波正太郎生誕100年記念 現代に届く『仕掛人・藤枝梅安』を
梅安撮影の舞台裏!
――撮影は、どの時期に行われたんですか。
豊川 ちょうど冬の京都での撮影になりました。とても寒かったです。時代劇なので中に着こむといっても限界があるし、防寒対策がいちばん苦労しました。なにせ、私は丸刈りだったもので……。
――それは寒かったでしょうね(笑)。
豊川 頭が寒すぎました。撮影の終盤は、テストまで帽子をかぶらせていただいたほどです。
愛之助 共演の佐藤浩市さん、椎名桔平さんたちと防寒グッズ自慢をしましたよね(笑)。
豊川 ボアブーツとかね。
愛之助 冬の京都で寒さも厳しく、足場の悪い道を草鞋(わらじ)で歩くのはつらかったです。でも、豊川さんが草鞋につけるカバーをプレゼントしてくださって、感謝しながら履いておりました(笑)。
――本当に和気藹々とした現場だったんですね。梅安シリーズは過去にも映像化されてきたわけですが、役づくりの面で苦心されたところはどこでしょう。
豊川 緒形拳さんをはじめ、先輩方の作品を見返す作業をしたのですが、やり方、切り口がたくさんあることに気づきました。それだけ、俳優として「作りがい」があるというか、このキャラクターのどこを選択して、どこをデフォルメするかという作業を監督、愛之助さんはじめ共演者の方と探っていくのはすごく楽しかったです。
梅安先生、彦さんの所作を特訓
――梅安は腕の良い鍼医者なわけですが、豊川さんも鍼治療の稽古をされたそうですね。
豊川 しました。でも、さすがに実際に人に打つことはなくて、ウレタンや枕、バスタオルに打って、手つきを学ぶという感じでした。
――誰かに打ってみたくなりませんでしたか。
豊川 いや、むしろ打ってもらいたかったです。治療してもらいたかった(笑)。
――原作を読み、治療院が繋盛しているのは理解していたんですが、映画を見ると、「ああ、こんなに流行ってたんだ」という発見がありました。
豊川 そこが映像の強みですよね。
――愛之助さんの彦次郎は、落ちついた雰囲気を漂わせていました。
愛之助 私は、彦次郎の人物造形は「明るい方がいいのかな?」と考えて撮影に臨んだのですが、河毛俊作監督から「明るいトーンではなくやってみて欲しい」とおっしゃっていただき、そこから彦次郎像を作りこんでいきました。闇のある感じといいますか。また、彦次郎は吹き矢の矢を「毒を塗った楊枝」で吹くんですが、「爪楊枝で命を奪えるのか」と、初めて台本を読んだ時に驚いたことを覚えています(笑)。
――彦次郎の“必殺兵器”ですからね。
愛之助 「本当に届くのか」と思ってしまうんですが、これが、届くんです。今回、役づくりにあたって武器の研究もしまして、まず、吹き矢のことを勉強しました。吹き矢にも種類があり、遠距離用のものは本当にびっくりするくらいの威力で的に突き刺さります。
――そんなに威力があるんですか。
愛之助 数回練習しただけでそうでしたから、本当に怖いと思いました。「これは十分に武器になるな」と思いましたが、接近戦では不利だとも気づきました(笑)。
――毒って、すぐに効くものなんですか。
愛之助 まさにその“時間”は重要でして、これは芝居にも関わってくることです。河毛監督に「毒が回り絶命するまでどのくらいの時間が必要でしょうか?」と質問したら、「7秒。7秒後に絶命する」というお答えだったので、“7秒後”を意識して芝居をしました。いろいろ考えながら彦次郎を作っていきましたね。
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