- 2014.11.05
- 書評
英国調、元祖コージー・ミステリの名作
文:杉江 松恋 (ミステリー評論家)
『「禍いの荷を負う男」亭の殺人』 (マーサ・グライムズ 著/山本俊子 訳)
出典 : #文春文庫
ジャンル :
#エンタメ・ミステリ
読者の用に供するため、以下に邦訳作品リストを挙げる(すべて文春文庫既刊。品切)。題名で一目瞭然だが、『桟橋で読書する女』はノンシリーズ作品である。
『「禍いの荷を負う男」亭の殺人』The Man with a Load of Mischief(1981)山本俊子訳
『「化かされた古狐」亭の憂鬱』The Old Fox Deceiv'd(1982)青木久恵訳
『「鎮痛磁気ネックレス」亭の明察』The Anodyne Necklace(1983)吉野美恵子訳
『「酔いどれ家鴨」亭のかくも長き煩悶』The Dirty Duck(1984)吉野美恵子訳
『「エルサレム」亭の静かな対決』The Jerusalem Inn(1984)山本俊子訳
『「悶える者を救え」亭の復讐』Help the Poor Struggler(1985)山本俊子訳
『「跳ね鹿」亭のひそかな誘惑』Deer Leap(1985)山本俊子訳
『「独り残った先駆け馬丁」亭の密会』I Am the Only Running Footman(1986)山本俊子訳
『「五つの鐘と貝殻骨」亭の奇縁』The Five Bells and Bladebone(1987)吉野美恵子訳
『「古き沈黙」亭のさても面妖』The Old Silent(1989)山本俊子訳
『「老いぼれ腰抜け」亭の純情』The Old Contemptibles(1991)山本俊子訳
『桟橋で読書する女』The End of the Pier(1993)秋津知子訳
『「乗ってきた馬」亭の再会』The Horse You Came in On(1993)山本俊子訳
『「レインボウズ・エンド」亭の大いなる幻影』Rainbow's End(1995)山本俊子訳
ここで邦訳は途絶えるが、以降二〇一〇年のThe Black Catまで九作が書かれており、二〇一四年六月になってさらに新作Vertigo 42が追加された。題名から「え、これがイギリスの旧いパブの名前なの」と思ったあなたは正しく、これはロンドンのさる高層ビルディングの四十二階にあるバーの名なのである。ね、まったく〈黄金期〉っぽくないでしょ。
なお、グライムズにはこの他、単発作品や短編集、詩集などの著作があり、アンディ・オリヴァー・シリーズ(一九九九年~)、エンマ・グラハム・シリーズ(一九九六年~)という二つの連作もある。実は『桟橋で読書する女』の主人公、カフェ店員のモード・チャドウィックは、後者のエンマ・グラハム・シリーズにも顔を出している。イギリス風アメリカ作家ではなく、アメリカ風アメリカ作家(あたりまえだ)のグライムズ作品がこちらでは楽しめるのである。
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