――団塊の世代の方がどんどん引退していく時期にさしかかっていますね。アクティブなリタイア生活を目指すと同時に、「長寿を謳歌」するのはいいが「病気をかかえてただ長生き」は嫌だという、いわば“長命恐怖症候群”のような気分が社会を覆っている気がします。
石原 「死」は仕方がない、生き物は必ず死ぬ。けれど「老化」はない。これが私の考え方です。というのは、動物は自分で死ぬまでエサをとって生きているでしょう。動物が老化で動けないのは、死のわずか数日前だけです。半身不随になったり、病気したり、寝たきりになったりするのは人間だけ。それが長命への恐怖につながるのでしょう。だからこそ、筋肉を鍛えて生涯動き、健康であることがだいじなのです。
――なるほど。石原さんのメッセージは一貫していてとてもシンプルですね。
石原 私は生き物としての基本、いちばん大切なのは何かを常に考えています。漢方なんて二千年前の考え方が、いまでもそのまま使えますが、先端医療の新発見は一時もてはやされても、その時代時代で見解を変えたりすることも非常に多い。
たとえば、コレステロールの適正値ひとつとっても現代医学の現場では決着がなかなかつきません。数値が高いのは諸悪の根源だとワルモノ扱いされたのが、いまでは、「低い人ほど長生きできない。ある程度高くないと、七十歳を越えられない」という学者もいるくらいです。あるいは高血圧には塩分がまったくいけないとか、血液をサラサラにするために水を大量に飲めとか、最新医学という名の一部の迷信がいかに戦後の日本人を呪縛してきたことか……。もちろん、西洋医学で助かる人もいる。でももっとも大切なのは、生命としての基本に立ち返って予防・治療にあたることだと思います。
――日本の医療はこれからどうなっていくと思われますか。
石原 私が医者になった三十年前には、ガンで亡くなる方が年に十三万六千人、医者の数は十三万。いまは医者二十七万にたいして、ガンで亡くなる方は年に三十一万人に増えている。おかしいでしょう。医療費の増大で保険診療負担をどんどん増やしても、いまの医療体制のままでは焼け石に水です。日本人の健康を脚から立て直し、日本全体の健康水準を底上げできれば、保険料を納めるだけで診療費はタダにできる、私はそう信じています。だって、防衛と警察はタダでしょう。医療もタダになるべきですよ。政府にはその場しのぎの処方ではなく、「国民の健康」という下半身を鍛えて、ふくれ続ける医療費の悪循環を断つ方策を考えてほしいですね。
お、もう背中が丸まってきましたね。足浮かしの腹筋運動、お疲れ様でした。
――ふう。筋肉の衰えを痛感しました。ではさいごに、石原さんがいま「尻欠け」で心配している人は?
石原 みのもんたさん、ですよ。今度また「おもいッきりテレビ」でご一緒するんだけど、彼はあきらかに働きすぎですね!(笑)。
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