広江氏は、「アクションありドラマありで、中篇としては読みやすいわりにキングの書きたいガジェットがすべて詰まっている」と、風間氏は「僕が最初に『キングすげえ、おもしろい!』と思ったのは、『霧』なんですよ」と語っています(ともに「ユリイカ 二〇一七年十一月号」より)。両氏の言はまさにそのとおりで、家族の日常が天災によってかき乱されるところからはじまり、避難したスーパーマーケット内での人間たちの不和と不安、やがて湧き出して世界を覆う奇怪な霧、そのなかにひそむ異様な何か……と、小気味よく恐怖の空間を築き上げたうえで、さまざまな人間のさまざまな感情が渾然となった不穏なカオスを作中に充満させてゆく。モンスターを触媒に人間の怖さをも描き切り、キングらしさがコンパクトなサイズに収まった不朽の名作なのです。
本書はこの「霧」を核として、キングの第二短編集Skeleton Crew(一九八五年)から中短編五編を精選して編んだ傑作選です。
Skeleton Crewは、これまで日本では『骸骨乗組員』『神々のワード・プロセッサ』『ミルクマン』の三分冊で扶桑社より刊行されていました。しかし、この三巻本が現在では入手困難なため、スティーヴン・キング側の提案で「霧」を中核としたSkeleton Crewの傑作選が企画され、作品選定についてもキング側のチェックを受けたうえで本書が刊行されました。Skeleton Crewが発表された一九八五年は、『クリスティーン』や『ペット・セマタリー』のあと、「モダン・ホラーの旗手」としての地位を固めつつあった時代にあたります。野心に満ちた若きキングの才気があふれる四つの短編と名作中編をお楽しみください。
以下、収録順に各作品について簡単な解題を付します。
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2016.01.25書評 -
巨匠キング 最愛の一作
2015.02.12書評
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『赤毛のアン論』松本侑子・著
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