- 2018.11.13
- 特集
現金が消える!? 新聞記者が予測、AIが変えるお金の未来とは?
文:坂井 隆之 ,文:宮川 裕章 ,文:毎日新聞フィンテック取材班
『AIが変えるお金の未来』(坂井隆之・宮川裕章+毎日新聞フィンテック取材班 著)
ジャンル :
#ノンフィクション
「あいつは個人と中小企業しか担当していなかったからな。もうその辺はサイキック社はじめネット企業が自身のデータから貸しちゃうから、厳しいよね。あとは金利のダンピング競争で。俺は大企業担当で助かった。もう銀行が生きていけるのはそこだけだよね」
「入行数年後だったかなあ、いきなり銀行が大規模リストラするだの報道がたくさん出てきてウソだろと思ったけれど、ほぼその通りになったなあ」
現状はデータ処理が追いつかないからと、日銀は個人のデジタル円預金を受け付けていないが、これが実現すれば、銀行は融資するための資金すら失ってしまう。最悪の事態も想定し、Y氏の銀行は預金以外で資金調達するためにトレーディング事業にも力を入れているそうだ。
話題を変えたいなと思い、音楽の話を振った。二人は学生時代バンドを組んでいたのだ。
「マハトマ・ガンジス聴いた?」
「聴いた、聴いた。インド音楽とクラブミュージックとフリージャズが組み合わさってすごいよね、あんなのあるんだと思ったよ。あれはかっこいい」
二人はこのミュージシャンを支援するためにバンドが発行した仮想通貨「マハトマコイン」を買っている。ミュージシャンが自身で資金調達し、コインを買ってくれた人にゴーグルを通じて音楽配信するのがすっかり定着した。音楽会社は全てつぶれた。それはいいが、副産物として皆が知っている曲がなくなり、カラオケが盛り上がらなくなった。X氏は中高時代の曲を歌ったり聴いたりして楽しめるが、思春期からマニアックな音楽ばかり聴いている若い世代にとって「国民的ヒット曲」などはるか昔に死語になっている。
ちなみに、こうしたコインへの投資は趣味と実益を兼ねている。目を付けたミュージシャンは割に人気が出る事が多く、買ったコインのほとんどが値上がり益を出している。
帰り道、Y氏は「女の子のいる店いかない?」と誘ってきた。仕方がねえなあ、と言いつつ頰が緩む。
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