- 2018.12.13
- インタビュー・対談
東野圭吾インタビュー「湯川でさえ、てこずる謎は執筆の壁も高かった!」
<週刊ミステリーベスト10>2018年国内部門 第1位『沈黙のパレード』 著者に聞く
出典 : #週刊文春
ジャンル :
#エンタメ・ミステリ
「これまでのガリレオの長編で湯川が対峙してきたのは、親友の天才数学者や非論理的な女性、気まぐれな少年たちでした。今回は、被害女性を愛した、善良で平凡な普通の人々にしようと。彼らが力を合わせたら、湯川でさえも手こずるような謎がうまれるのではないかと考えたのですが、実際に書こうとしたときに、相当な壁の高さを感じました」
謎に対して、湯川が科学的なアプローチで取り組む見せ場はもちろんのこと、佐織を大切に想っていたとはいえ、普通の人々が、犯罪にどうかかわっていくのか、という部分も読みどころの一つだ。
「ここ最近、気を付けていることが、今回は上手くいきました。それは何かというと『登場人物の行動、心の動きも含めて、自分だったらどうするかを徹底的に考える』ということです。一人ひとりの考えや行動を真剣に考えたら、誰も作者の都合にあわせて動いてはくれない。もっと言えば、『この人がこう動いたとしたら何が起きたのか。よほどのことがあったに違いない』と、自分自身で謎解きをしながら書いた部分もあります」
「ミステリーベスト10」の推薦者からは「ガリレオ、再始動! と期待が高まる中、それを上回った」という声もあがった。
「再始動と言った以上、また充電したら怒られるでしょうから続けて書きますよ。創作者は新作ごとにハードルを上げていくべきだと考えています。しかもガリレオである以上、お茶を濁そうとは思わない。でもやっぱり難しかったですね(笑)。長編であれば、湯川が事件に関わる“理由”が必要で、今回も“それなり”のものを用意しました」
著者が言うところの“それなりの理由”が、圧倒的な読後感へと導いてくれる。
「『沈黙のパレード』は、集大成と言える作品になったと感じています。まだ翻訳もされていないので、捕らぬ狸の皮算用もいいところなのですが、『容疑者xの献身』で逃したエドガー賞が獲れたら嬉しいなぁと思っています(笑)」
東野圭吾/1958年大阪府生まれ。85年『放課後』で江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。2006年『容疑者xの献身』で直木賞。ガリレオシリーズの他『手紙』等、著書多数。
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