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10年後には紙の本ってなくなるの? ──『#電書ハック』配信記念#1

10年後には紙の本ってなくなるの? ──『#電書ハック』配信記念#1

電子書籍の現在と未来を語る、IT系作家と現役電子書店員座談会


ジャンル : #小説

柳井 編集の人に聞くと、一昔前はある作家さんがヒット作を出すと、その作家の別の本もみんな売れたのに、最近は一つの作品がヒットしても他の作品まで波及しなくなってきたというのですが、元リアル書店員の矢部さんもそんな風にお感じになりますか?

矢部潤子氏(honto)

矢部 確かに過去の作品まで遡って読んでくれるような読者が減ってきているというのは、紙の書店にいるときから感じていました。昔は直木賞を受賞した作家の既刊本が多いと、書店の人間は喜んだんですけど、最近では受賞作は売れますけど、既刊本はそこまで売れないというか、読者がついてきてくれなくなりましたね。
全般的に売れるものは売れますが、限られたものに集中しがちで広がりがない。ある程度、評価が固まったもの以外には、お金を払わないということなんでしょうね。作家の先生にファンがつくというよりも、作品の評判に読者が買うきっかけを見出すという感じでしょうか。

柳井 作家の名前が一番の看板だった時代は終わったということかもしれませんね。

矢部 先輩から「○○先生だったらどれくらい売れる」ということを教わって、長年やってきたわけですが、どうもそれだけではなくなってきているのかもしれません。

柳井 紙の本に比べると電子書籍はフェアとか割引き、ポイントバックなど、販促がきちんと行われているようですね。紙のリアル書店の場合、販促というものをあまり見ないんです。読者が店頭に来てくれればPOPがあったり、棚のいい場所にあるということ自体がPRになるわけですが、読者に直接語りかけてくる販促ってないですよね。電子書店で会員登録すると毎日のようにセール情報がきますけど、家に本屋のチラシが入ってくるとか、ダイレクトメールが届くといったことはまずない(笑)。
私はもともとIT系でゲームの営業や広報をやっていた人間です。なので、紙の本が出る時に販促はどういうことをやるのですかと尋ねたら、「新聞・雑誌や書評家に献本するぐらいで、それ以外は特にありません」という答えで、驚きました。ゲーム業界だと何ヶ月も前にデモ版を作るなど、事前にいろいろやるわけです。
紙の本は書影が出るタイミングも遅くて、事前になにかしようと思っても書影もないし、周囲の人間に勧めようにも予約もできないし、「えっ、これどうやって売るの?」という感じでした。配本されてからも特になんの販促もなく、これは物を売る環境としてはどうなのかなと思いました。
その点、電子書籍の方がセールもありますし新刊案内も来ますし、どういう結果が出たかデータも取っているはずですし、物を売る環境としてずいぶんと違いを感じますね。電子書籍の方がよりきちんとビジネスになっていて、紙のリアル書店はもっと売れていた時代のやり方を今も引きずっていると思います。


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電子書籍
#電書ハック
柳井政和

発売日:2018年11月09日

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