Jリーグで二十二歳から三年間プレーした後、今のメトロ・カーライルへ移籍した。カーライルが提示した年俸は、Jリーグにいた頃の半分程度だった。少なからずためらいはあった。コハルは収入が減ることに一切の文句を言わず、イギリスでプレーしたいって思うなら絶対にそうすべきだと後押しまでしてくれた。
カーライルは三部のチームだが四年前には二部に所属していたし、毎年昇格候補と目されているチームだ。ならば自分が活躍すればチームを昇格させ、コハルを安心させられるだけの年俸を受け取れるようになるかもしれない。選手としての野心を満たすことも、叶うかもしれない。
去年の春、同じ大学のサッカー部に所属していた友人が遊びに来た。広告代理店に就職した彼は、しばらくのあいだロンドン支店に勤務するとのことだった。数年ぶりの再会は私にとって心のはずむもので、彼が到着する前からさまざまな話題を用意していた。サッカーの話じゃなくともかまわない。互いの近況を語り合い、たわいもない雑談に興じるだけでも十分に有意義な時間になるはずだと想像を膨らませていた。
この続きは、「文學界」12月号に全文掲載されています。
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