- 2019.12.23
- 書評
元NHK検察担当記者も思わず唸る、リアルを超えた社会派エンターテイメント
文:鎌田 靖 (元NHK解説副委員長 フリージャーナリスト)
『標的』(真山 仁 著)
出典 : #文春文庫
ジャンル :
#エンタメ・ミステリ
本書の元となった新聞小説を書き終えた際のインタビューで真山は、あの「ハゲタカ」の他にもシリーズものをやりたかったと述べている。そう「ハゲタカ」の主人公鷲津政彦が様々な困難にぶつかりながら成長していくように、特捜検事、冨永真一もまた私たちの前に登場して新しい事件を手掛けてほしい。そして個人的に許されるのなら本書の主人公の一人、誰が何といっても魅力的な越村みやびが、この絶体絶命のピンチをどう乗り越えるのか、政治家として今後成長していくのか、その後を知りたい。そう思うのは私だけではないはずだ。
真山と新人時代を共に過ごしたNHKの後輩記者は当時、真山がいつもこんなことを言っていたと教えてくれた。「小説家になりたい」「ミステリーが書きたい」「山崎豊子のようになりたい」
かつて番組賞の授賞式で「ようやく食えるようになった」と話した真山はいまや売れっ子作家の一人だ。記者の先輩でもある山崎豊子の仕事を引き継げるただ一人の作家になりつつあると言ってもいい。そんな真山の次回作を心待ちにしつつ、再びスタジオであるいは酒場でもいいのだが、現実社会の問題について、またじっくりと話をして知的刺激を受けたいとつくづく思う。
二〇一九年十月
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