本書『毒々生物の奇妙な進化』に登場する毒は、生きものが産生した毒であり多くの種類があるが、いずれも咬みつくか刺すかして毒を相手の体内に入れる。毒ヘビや毒グモなどが咬む部類であり、ハチやアリ、サソリなどが刺す部類だ。フグ毒やキノコ毒とは違い、食べたりするのではなく、毒々生物から直接的に注入されるから怖いと言えば怖い。だからこそ注意して慎重に扱いながら毒の本質を研究していく面白さがこの本には描かれている。私は毒の研究者ではないが、国立科学博物館の標本用にマムシやハブなどの毒蛇を捕獲したりヘビ類の研究者と交流してきた。雑談の中で盛り上がるのは毒蛇に咬まれた時の話だ。中でも東京で教鞭をとっておられたアメリカ人のゴリス先生が飼育室で北米産のガラガラヘビに咬まれた時のことは印象に残っている。50年も前のことだが、咬まれた直後に連絡したのは立川にあった米軍基地で、すぐさま基地の病院に入院したが、ガラガラヘビの抗毒血清が日本にあるはずもなかった。だがそのころ血清はすでに太平洋上空を飛んでいた。一報を受けて米本土から空輸されていたのである。まもなく退院されたが、その時の感想は「とても痛かった」だった。この本の筆者も何度も毒々生物に刺されたり痛みを経験しているが、欧米の科学者にはそれを解き明かすべく自ら意図的に刺され、咬まれ、ときには摂取するという驚くべき人がいることを書き、それらの研究に挑む科学者たちを筆者はユーモラスに語っている。
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