書評

動物学者が体験した"毒々生物"の知られざる実態とは!?

文: 今泉 忠明 (動物学者)

『毒々生物の奇妙な進化』(クリスティー・ウィルコックス)

『毒々生物の奇妙な進化』(クリスティー・ウィルコックス)

 中でも興味深いのは、アリゾナのカールハイデン・ハチ研究所で昆虫学者のジャスティン・シュミット氏が、ハチ・アリ類の78種に刺されたときの痛みを数値化したことだ。シュミットは「疼痛指数」なるものを考案し、「無痛」を0.0、「底知れない苦痛」を4.0として、痛みを段階分けしたのだ。もっとも痛かったのはサシハリアリで指数は4.0+だったという。

 毒の強さは通常は半数致死量(LD50)で表す。一般に投与した動物の半数が死亡する用量で、動物の体重1kgあたりの投与重量mgを計算しLD50=mg/kgと書く。たとえば北海道・本州・四国・九州・屋久島などに分布するマムシはLD50=1.5mg/kgであり、南西諸島のハブは3.42mg/kgで、マムシの方が2倍以上も毒性が強いということになる。動物の中で最強はマウイイワスナギンチャクで0.00005~0.0001mg/kgとされる。ただし、腹腔内注射と皮下注射とでは5倍以上も差異があったりするからおおよその数値と見た方が良いのかもしれない。現在ではLD50を正確に求めることは科学的には困難で数値にばらつきが大きいのであまり意味がなく、動物愛護の点からも好ましくないとされているから、シュミットが提唱する疼痛指数も捨てたものではないのである。

毒々生物の奇妙な進化クリスティー・ウィルコックス 垂水雄二訳

定価:本体950円+税発売日:2020年03月10日


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