「止まり木」という意味を持つこの作品集を舞台に、又吉さんが文章を綴り、佐藤さんがデザインし、九龍さんが編む。彼らが形にしたものが、「羽田空港 蔦屋書店」という場を伝って人の手に渡る。
空港から向かう場所に合わせて5色の表紙から好きな色を選んで、日付印の入ったスタンプでその日その場所にいた記録を刻んで、移動中や旅先での時間を、その本とともに過ごす。
「空港」という場所に、『Perch』が存在すること。
手にした人の数だけ、物語が増えていくこと。
それを人は、どう楽しんでくれるだろう。
「耕書」という言葉を得て
『Perch』という作品に企画・制作という立場で関わりながら、私は改めて、今後の自分のあるべき姿を見つめていました。
そしていま、「耕書」という二文字が目の前に立ち上がっています。
本を耕す。本のある場所を耕す。
それはときに書く人として、作る人として。作者と読者をつなげる人として。
土を耕し豊かな土壌を育てるように、その場所にその本があるにふさわしい環境を企画する人になれたなら――。
「耕す」は英語でカルティベイト。ラテン語ではカルチャーと同じ語源でもあります。
たとえば「耕書」に「家」と付けて、「耕書家」を名乗っていくのはどうだろう。
「いつか自分が名乗ろうと思って考えた言葉なんだけど。木村さんを見ていたら、木村さんが名乗るほうが圧倒的にふさわしく感じたんだよね。よかったら使ってください」
『Perch』を作っている途中で、九龍ジョーさんが、私をそう編集してくれました。
耕書家・木村綾子。
そんな人に、私はなれるだろうか。
またひとつ目標が出来ました。
そしてその目標を実現させていくための場所として、春から新しく「蔦屋書店」と正式に業務委託契約を結ぶことになりました。
私の業務は、「本」から「場所」を、あるいはその逆、「場所」から「本」をイメージして、全国にある蔦屋書店へ企画を提案していくこと。そしてそれはイベントだけではなく、「本にまつわる企画と制作」という柔軟な発想で、本と人とをつなぐ場所を作っていくことです。
企画することで「何かと何か」をつなげていたら、自分自身がダイレクトに影響を受けてしまって、人生さえ大きく左右されていました。振り返ってみたら、重大な事件の当事者だったのは、私自身だったのです。
「その本がその場所にあること」「その場所にその企画があること」は、重大な事件性を孕んだ奇跡です。それでも私は、続けてしまうんだと思います。
本を耕し、本のある場所を耕したその先にどんな景色が待っているのか、見てみたいと思うから。
耕書家・木村綾子、始動します!
◆エッセイ全文掲載の『別冊文藝春秋』冊子版 販売情報
エッセイ全文と、『Perch』制作の過程が詳細に記録された「制作日記」を掲載した『別冊文藝春秋』2020年5月号の冊子版を下記オンラインショップにて販売しています。
(※『別冊文藝春秋』は電子文芸誌なので、冊子版は今回のための特別制作。部数限定で販売致します)
○羽田空港 蔦屋書店オンラインショップ
https://store.tsite.jp/item-detail/magazine/19888.html
◆『Perch』販売店情報
2020年9月26日(土)7:00より下記2箇所で販売中。
○羽田空港 蔦屋書店オンラインショップ
https://store.tsite.jp/haneda-airport/news/magazine/15872-1627410911.html
○TSUTAYA BOOKSTORE福岡空港 ※店頭のみ
https://tsutaya.tsite.jp/store/fukuoka-airport/
営業時間:朝6:30~21:30(当面の間朝7:00~20:00) 不定休
所在地:福岡県福岡市博多区下臼井767-1 福岡空港国内線ターミナルビル3F
電話番号:092-627-1611
撮影:佐藤亘
きむら・あやこ 1980年生まれ。静岡県浜松市出身。明治大学政治経済学部卒業後、中央大学大学院にて太宰治を研究。文学研究科修士課程修了。10代から雑誌の読者モデルとして活躍、2005年よりタレント活動開始。20年3月から「蔦屋書店」で本にまつわる企画と制作をおこなう。「著書に『いまさら入門 太宰治』(講談社)、『太宰治と歩く文学散歩』(角川書店)、『太宰治のお伽草紙』(源)など。
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「こんなときだから、ライブみたいな気分で作ったものを届けます」――又吉直樹、書き下ろし『Perch』に込めた想いとは?(文春オンライン)
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リトルプレスならではの楽しみ全開。又吉直樹・書き下ろしアンソロジー『Perch』が出来るまで
又吉直樹×佐藤亜沙美×九龍ジョー×木村綾子(文春オンライン)
https://bunshun.jp/articles/-/40420
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『皇后は闘うことにした』林真理子・著
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応募期間 2024/11/29~2024/12/06 賞品 『皇后は闘うことにした』林真理子・著 5名様 ※プレゼントの応募には、本の話メールマガジンの登録が必要です。