『古関裕而の昭和史』(辻田 真佐憲)

――再現度ということでは、今回、昭和初期に活躍した音楽関係者をモデルとした登場人物が多く登場しています。なんといっても話題になったのは、先日、急逝された志村けんさんが演じる小山田耕三です。

辻田 小山田のモデルは山田耕筰ですね。誰もが知っている童謡「赤とんぼ」から交響曲まであらゆるジャンルの音楽を生んだ近代日本の音楽界の巨人です。志村さんのオーラといいますか、演技力と相まって「大御所」としての姿が良く出ていると思いました。

 山田耕筰は女性関係が奔放だったようで、当時の雑誌に女性スキャンダルが掲載されています。それを読んだ古関裕而は、尊敬する山田の下半身事情に対する怒りを、当時交際中だった金子へのラブレターに綴っています。女性関係も含めて、志村さんがぴったりの役どころだったのかもしれませんね(笑)。最後まで、小山田役を見ることができないのはとても残念です。

 ドラマ内では、小山田が若手の古山を認めつつも、その才能を恐れて芽を摘もうとしているように描かれていました。小山田が古山を強く意識しているように見えます。しかし、残された古関のインタビューを見ていると、山田よりもむしろ古関の方が山田を敬愛し、乗り越えようと必死になっていたように感じます。

古関裕而が描かれた福島市内の看板(2019年5月、著者撮影)