このコラムではもう何回も登場していますが(「第3回:うちの子になった野良」、「第28回:ドタバタ! 猫の撮影」)、私の実家では1匹の猫を飼っています。去勢済みのおっちゃん猫、茶白トラのニャアです。ヤツは私の両親(特に父)がデロデロに甘やかしていることもあり、元野良猫とは思えないほどの甘えっ子になってしまいました。
自分に注目されていないと露骨にスネますし、暇そうにしている(※暇ではない)人間を見つけると「ホラ撫でなさいよ。撫でさせてやるから」という顔でゴロンと横になるのです。父によるマッサージが大好きで、家の中には常時4ヶ所ほど猫用ベッドが備わっています。
猫は快適な場所をよく知っている――というのは有名な話ですが、本当に、季節や時間によって、家の中で一番気持ちのよい場所で寝ているんですよね。
爽やかな時期には木漏れ日のあふれる窓辺で昼寝をしていますし、肌寒い時期には南向きの掃き出し窓のある畳の上でゴロゴロしています。太陽の光を吸ってふかふかになった布団を部屋に取り込み、シーツを手に取って振り返ったら、その一瞬の間に布団の真ん中を占拠されていたこともありました。
真冬の頃は父が奮起し、防寒用ベッドをこさえます。ねこ用ベッドにタオルにくるんだ電気あんかを敷き、毛布を二、三枚重ねてクリップで留めた特製「ねこちぐら」です。間違いなく我が家で一番あたたかいベッドで、ニャアも愛用してくれていたのですが、人間が寝る時間になるとそのベッドから出て、人間の布団にやって来るようになりました。
一番体温の高い父の股の間に入るのがお気に入りだったようなのですが、そうなると猫に気を遣った父は寝返りが打てなくなります。「嬉しいけどツライ」などと言ってモゾモゾするのがよくなかったのか、使用頻度はそれほど高くありません。
母のところに行ったこともあるにはあるのですが、爆睡中の母は猫に気付かないまま寝返りを打ってしまいました。布団から転げ落ちたニャアは「ドカン!」とすごい音を立てて襖にぶつかってしまい、以来、母の布団には寄り付きもしません。
普段、東京と群馬を行ったり来たりの私は、ニャアからすると「放浪猫」ぐらいの認識のようです。母や父と比べて一緒にいる時間は少ないので、あんまりゴロゴロ言ってくれないのですが、しばらく会えなくても忘れたわけではないようで、顔を合わせると「おう、お前生きとったんか!」といった風情でちゃんと歓迎はしてくれます。
そんな微妙な距離感の私とニャアなのですが、大変誇らしいことに、一緒に寝てくれる率は、三人の中では私が最も高いのです。
それはもしかすると、ニャアが人間の布団で寝るようになったキッカケが影響しているのかもしれません。