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作家の羽休み――「第62回:病院は早めに行こう③」

作家の羽休み――「第62回:病院は早めに行こう③」

阿部 智里


ジャンル : #エンタメ・ミステリ

前回までのあらすじ

 あまりに〆切をぶち破っているせいで、ゲラを郵送すると間に合わない! でもスキャンした奴をメールで送ればなんとかなるぞ! 入院しても同じやり方で行けるやろ!!?


 ゲラ作業をするために机のある病室を予約していたのですが、入ってみて思わず笑いました。何の因果か、その病室は私が少し前まで暮らしていた文春の執筆室(第2回:メイドイン執筆室)にうりふたつだったのです!

 机とベッドの比率が逆で、バスルームが医療用になっていて、あとは机の上に広辞苑がない……くらいの差でしたね。

 なんか、初めて来た気がしない……これならすごく作業進みそう……。

 そう思いながら、あの神さまみたいな先生にサクッと手術して頂き(めちゃ腕の良い先生だったので、状態が悪かった割にすぐに終わりました)、麻酔から覚めた直後に編集さんから新たなゲラが送られて来たのでした。

 コロナ禍で外部との面会は全面禁止でしたが、洗濯物の替えや差し入れを看護師さんを通してお願いすることは許されています。母が洗濯してくれて綺麗になったパジャマやタオルと一緒に、実家に送られてきたゲラが届いたわけです。

 2度目のゲラ作業がどんな感じだったのかは、熱があった以外は前回ページに書いたのとほぼ同じなので割愛します。

 とにかく、今回もなんとかゲラ作業が完了しました。

 私自身は病院にいながら、ゲラを東京の編集さんにお送りする作戦はこうです。

 洗濯物と一緒に看護師さんにゲラをお渡しし、それを受け取った父が印刷所でスキャンし、そのデータが入ったUSBを再び看護師さんにお渡しし、私が病室に持ち込んだパソコンで編集さんに送る。

 立案時点では、〆切の朝までにゲラチェックを終わらせていさえすれば間に合う、完璧な作戦だと思っていました。

 これを送りさえすれば、一息つける。

 そう思っていたのですが、またまた、性懲りもなく、ここでも私はミスを犯しました。

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