戦争は遠い日の記憶ではない。この時代を生きる我々へ、進むべき道を教えてくれる今月の文庫フェア。
知っておきたい「戦争」フェア 2023 より
【新刊】『帰艦セズ〈新装版〉』(吉村昭)
徹底した取材から浮かび上がる「事実」の重み――必読の七短篇
昭和19年、巡洋艦「阿武隈」の帰還兵・成瀬時夫が、小樽郊外の山のなかで「飢餓ニ因ル心臓衰弱」で死んだ。
市役所を退職し、いまは北海道の民衆史研究会で活動をする橋爪は、 自らの過去の経験から、成瀬は‶逃亡”したのではないか、と直感。 遺族を探し、調査をするようになる――。
長篇小説『逃亡』と合わせ鏡のようになっている表題作をはじめ、 大阪の篤志面接委員から聞いた話をもとにした「鋏」、ある寺の墓石をつくる石材店主がもらしたことがきっかけとなった「白足袋」、能登の岩海苔採りの遭難を報じた新聞記事がヒントになった「霰ふる」など、全7篇。
不可解な謎を秘めた人の生の、奇妙な一面を見事にすくい上げ、徹底した取材と想像力により文学作品に結実した短篇集。待望の新装版。
文庫解説:梯久美子(ノンフィクション作家)
『小隊』(砂川文次)
ロシア軍が北海道に侵攻。元自衛官の芥川賞作家による衝撃作
ロシア軍が北海道に上陸。
自衛隊の3尉・安達は敵を迎え撃つべく小隊を率いて任務につく。
避難を拒む住民、届かない敵の情報、淡々と命令をこなす日々――。
そんな安達の“戦場”は姿を現したロシア軍によって地獄と化す。
軍事描写のあまりのリアルさに話題となり、専門家をも唸らせた『小隊』にデビュー作『戦場のレビヤタン』を合本して文庫化。
「ブラックボックス」で第166回芥川賞を受賞、元自衛官という異色の経歴をもつ作家が放つ、衝撃の戦争小説3篇。
■著者コメント
『小隊』を書いている時、私はある言葉だけは絶対に使わないようにしようと決めていました。
その言葉は、それ自体が持つ重みに反して、使えば使うほどに失われてしまう何かがある気がするのです。
その何かを、お読みいただくみなさまに感じていただければ幸いです。
――砂川文次
■推薦コメント
「戦場」とはこうしたものか ――小泉悠(東京大学専任講師)
目次
「小隊」(第164回芥川賞候補)
「戦場のレビヤタン」(第160回芥川賞候補)
「市街戦」(第121回文學界新人賞受賞)
『日本のいちばん長い日 決定版』(半藤一利)
あの日、日本で何が起こったか……
昭和20年8月14日正午から24時間の内に起きた出来事を埋もれていた資料をもとに再現。画期的ノンフィクション待望の文庫化
『殉死〈新装版〉』(司馬遼太郎)
“軍神”の人間性を解明した問題作!
日露戦争で苦闘した乃木大将は、戦後は輝ける英雄として称えられた。その彼が明治天皇の崩御に殉じて自ら命を断ったのはなぜか?
乃木希典(のぎ・まれすけ)――日露戦争で苦闘したこの第三軍司令官、陸軍大将は、輝ける英雄として称えられた。戦後は伯爵となり、学習院院長、軍事参議官、宮内省御用掛など、数多くの栄誉を一身にうけた彼が、明治帝の崩御に殉じて、妻とともに自らの命を断ったのはなぜか? “軍神”の内面に迫り、人間像を浮き彫りにした問題作。解説・山内昌之
『あ・うん〈新装版〉』(向田邦子)
著者がもっとも愛着を抱いた唯一の長篇小説
神社の鳥居の狛犬のように親密な男の友情と、親友の妻への密かな思慕を、太平洋戦争をひかえた世相を背景にあざやかに描いた長篇
文春文庫 知っておきたい「戦争」フェア 2023 対象本
『とめられなかった戦争』
『女たちのシベリア抑留』
『殉死〈新装版〉』
『北方の原形 ロシアについて』
『小隊』
『インパール〈新装版〉』
『昭和天皇独白録』
『ノモンハンの夏』
『ソ連が満洲に侵攻した夏』
『日本のいちばん長い日 決定版』
『原爆供養塔 忘れられた遺骨の70年』
『参謀の昭和史 瀬島龍三』
『情報なき国家の悲劇 大本営参謀の情報戦記』
『遠い接近』
『あ・うん〈新装版〉』
『一下級将校の見た帝国陸軍』
『逃亡〈新装版〉』
『深海の使者〈新装版〉』
『帰艦セズ〈新装版〉』
『ある小さなスズメの記録 人を慰め、愛し、叱った、誇り高きクラレンスの生涯』
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『リーダーの言葉力』文藝春秋・編
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