五日目は十二月の二十日で、三輪藩の望月出雲守景清殿に招かれた稽古能はもう三日後になっていた。
気持ちの片隅にずっと消えずにいた、師走二十三日まで生きていく鵺への路が鮮やかさを増して、それか、と剛は思った。
見渡したいのか。
能を能にしているものを見渡したいのか。
それがために固まり切れずにいるということか……。
どうしたものかと剛は思案した。
次の月次御礼は二十八日で、あと八日だった。
たとえ、その日が十五日と同じ稀の日であったとしても、二十八日には為せない。
まだ、急養子が許されぬ身代わりの十六歳だ。日を置かずに新年にもなる。御公儀の祝賀を壊せば御家が壊れる。
とはいえ、又四郎には今年最後の月次御礼となる二十八日を迎える前にすべてを伝えて来年に備えたい。
新年になってからばたばたと用意を整えるようでは、いかにも振舞いが軽い。軽ければしくじる。
となれば、二十三日の稽古能を終えてからでは遅い。
今日だ。
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