切りのいい二十日の今日、伝えたい。
伝えられるか、と剛は己れに問う。
あの志も覚悟もたっぷりの吏僚に、固まり切らぬ腹で、御家を壊すぞ、と言い渡せるか。
今日、言えるくらいなら、と剛は思う。
昨日言っているし、一昨日言っている。
言えなかったから今日に至っている。
当然、今日も言えぬ。
このままゆけば、明日も明後日も言えぬだろう。
ならば、と剛は思った。
想いを切って、二十三日を待とう。
そして、二十三日までの今日と明日、明後日は、躰を空っぽにして舞台のことだけで満たそう。
「想いも寄らぬこと」も「ちゃんとした墓参りができる国」も、腹を据えてしばし追い遣る。能でいっぱいにする。
出雲守殿のようにではないものの、己れとて能の路だけを歩んできた。
野宮での十年を、もやもやと居る流された仏たちやノミヤの前で役者として生きた。
跳んで跳んで、跳びつづけた。
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