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歌人・服部真里子インタビュー 短歌にしか築けない世界を作りたい

歌人・服部真里子インタビュー 短歌にしか築けない世界を作りたい

「水仙と盗聴」論争

――服部さんの「水仙と盗聴、わたしが傾くとわたしを巡るわずかなる水」という歌を、小池光さんが「まったく手が出ない」と評された(角川書店『短歌』2015年5月号)。それをきっかけにこの歌を「わかる」か「わからない」か、短歌界で大きな論争に発展しました。

服部 2015年のことです。当時はこの件で新聞から取材を受けましたし、ラジオでもとりあげてもらいました。

 人間が自然にしゃべった言葉を書き起こせば散文になりますよね。韻文って不自然なんです。意味をトレースするだけだったら散文でもいいのであって、57577の短歌の形にするのならば、短歌の形でしかできないことをしたい。リズムがあって終わりも決まっている短歌には、意味や文脈から外れた言葉を入れても何かひとつのものとして見えてしまうという性質があって、そういう言葉でしか作れない世界があると思っています。

 発表当時、この歌は暗喩で、喩えられた何らかの事実を伝達しようとしているという前提で「解読」する人が多くて驚きました。どう読んでいただいてもいいのですが、私の作歌時のスタンスを言うなら、そういう作り方はしていません。

 私は普段好きな名詞を見つけて、そこから歌を作っていくという方法をとっているのですが、「水仙と盗聴」のときもそうでした。「水仙」と「盗聴」という言葉の組み合わせが気に入って、あとはどう見せたらこの言葉が一番きれいに映えるのかということを考えて完成させました。

 こういう風に作り方の裏側を明かしてしまうと、歌のかがやきが目減りすると言われることもあるんですが、私はそうは思いません。短歌は短歌であって、作者の手を離れたらそれはもう作者が支配できるものではないと思っていますから。

――「水仙と盗聴」の歌は、第二歌集『遠くの敵や硝子を』(書肆侃侃房)にも収録されました。

服部 はい。「水仙と盗聴」の入った連作に関しては初出のまますべての歌を入れました。改めて連作を通して読んでもらって、連作の中で「水仙と盗聴」がどう見えるのかをぜひ教えてもらいたいです。


著者プロフィール

服部真里子(はっとり・まりこ)

1987年 横浜生まれ。
2006年 早稲田短歌会入会、作歌を始める。
2009年 同人誌「町」参加。2011年解散。
2012年 未来短歌会所属。「行け広野へと」で第55回短歌研究新人賞次席。
2013年 「湖と引力」で第24回歌壇賞受賞。同年、未来賞受賞。
2014年 第一歌集『行け広野へと』刊行。
2015年 『行け広野へと』で第59回現代歌人協会賞受賞。
2018年 第二歌集『遠くの敵や硝子を』刊行。

電子書籍
行け広野へと
服部真里子

発売日:2018年09月07日

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