「作家と作品はまったく切り離して考えるべきだという人もいるが、少なくとも私は、彼/彼女がいかなる時代を生き、誰を愛して何に傷つき、どのようにして死んでいったのかを知りたく思う」と、「あとがき」で梯さんは記している。
私も同じように思っている。私のやっている短歌という短詩型では、作者についての情報は、時に思いもかけない歌の背景を暗示することがあり、歌の理解が格段に深まることがある。常に作者の実生活がそのまま作品に表れてきているということはないのであって、そこには十分注意深くあるべきだが、作者の実生活に縛られるのではなくて、作者を知ることが歌の読みの深度を深めるのであれば、知るに越したことはない。
梯さんがここで紹介した諸々の作家の愛の姿は、その一例を原民喜で示したように、確かに作品だけを読んでいたのでは気づくことのない読みの深さに私たちを導いてくれるものであろう。もう一度、これらの作家を読み直してみたいと思わせてくれる一冊であった。
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