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サイゼリヤでバイトする“異色の一つ星シェフ”が、いま絶好調な理由とは? コロナ時代をタフに乗り切る異才に、注目のSF作家・小川哲が迫る

サイゼリヤでバイトする“異色の一つ星シェフ”が、いま絶好調な理由とは? コロナ時代をタフに乗り切る異才に、注目のSF作家・小川哲が迫る

聞き手:別冊文藝春秋

「村山太一×小川哲」別冊文藝春秋LIVE TALK vol.1[ダイジェスト]

出典 : #別冊文藝春秋
ジャンル : #小説

小川 すべてが論理的に考えられているんですね。

村山 まさに、車の生産ラインにおいて画期的だった「フォードシステム」みたいなものですよね。仕組みや順序が明確だから、誰でも新人さんに教えられるし、教わる側も覚えやすいから、あっという間にみんなのチームワークの中に入っていける。

小川 うーん、徹底して合理的なシステムです。でも、その仕組み、まさかそのまま、ラッセのようなガストロノミーに適用できるわけではありませんよね。

村山 それはそうですね。うちもそうですが、そもそも個人店は居抜きで物件を借りたり買ったり、というところが多いから、なかなか一からキッチンを設計するというわけにはいかない。

 でも、工夫次第で出来ることはたくさんあって。たとえば、うちはもともと居酒屋だった物件で、キッチンも鰻の寝床みたいに細長いんです。だから「反時計まわりに動線確保」なんて、とてもじゃないけど出来ない。でも、洗い物の効率はあげたい。考えた結果、僕がしたのは「ラックを増やす」という選択でした。お皿を入れる「ラック」、これがないと洗浄機に入れられないのですが、通常、一つの店舗に二つ三つしかないであろうこのラックを、うちでは一三個使ってます。

小川 一三個!

村山 そう(笑)。サイゼリヤはひとつの洗浄機でお皿もグラスもカトラリーもみんな洗えるんですが、うちでは設備のレイアウト上それが出来ないので、グラス専用の洗浄機も導入。ラックが、しめて一三個になったというわけです。

小川 おお!

小川哲氏

村山 さらに、洗浄機に純水フィルターというのを付けまして。水道水には不純物が入っているので、そのまま乾かすと、水の跡が汚く残ってしまう。純水、つまり真水だとそういうことは起きないんです。だから、営業が終わった後、洗浄機から出したラックを、キッチンにポンッと置いておくだけでいいんです。

小川 つまり、拭かなくていいわけですか。

村山 そうなんです。それだけじゃなくて、洗浄機って約八五度以上の温度ですすぐので、ほぼ殺菌できるんですよ。それをわざわざ布巾とかダスターで拭くのっておかしいでしょ? 乾いたお皿を、きれいに洗った手でディッシュウォーマーの中に移せば、ウォーマーの中も八五度前後ありますから、安全なんです。

小川 それ、すごくいいですね。僕も飲食店でアルバイトしていたとき、グラスを拭くのが心配だったんですよね。ダスターの管理って杜撰だし、かえって汚くならないのかと。でも、布で拭かないと水垢が不衛生に見えるから。いまのお話はすごく合理的で、腑に落ちました。清潔だし、しかも、人が加わる工程が減れば、それだけ人手も減らせます。

村山 まさにそうなんです。昔は、四、五人で三時間かけて拭いていたのに、いまは二〇分でミッション完了です。

別冊文藝春秋からうまれた本

電子書籍
別冊文藝春秋 電子版33号(2020年9月号)
文藝春秋・編

発売日:2020年08月20日

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