- 2020.10.01
- インタビュー・対談
サイゼリヤでバイトする“異色の一つ星シェフ”が、いま絶好調な理由とは? コロナ時代をタフに乗り切る異才に、注目のSF作家・小川哲が迫る
聞き手:別冊文藝春秋
「村山太一×小川哲」別冊文藝春秋LIVE TALK vol.1[ダイジェスト]
ようやくたどりついた超筋肉質な店舗経営
小川 やみくもに売上増を目指すのではなく、経営構造を変えることで、収支を改善する作戦ですね。
村山 そうです。大事なのは経常利益と、みんなの幸せです。ラッセの場合、一人あたりの売上は、スタッフが一二人いた時代で八五〇万円。それがいま、一人あたり一九〇〇万円近い金額になっています。もちろん全体の売上は、一二人いたときのほうがありますが、一人当たりの金額は倍増した。給料もあがったし、いまのスタッフのほうが満足度はだいぶ高いだろうと思います。
小川 なるほど。それは僕も取り入れたい作戦ですね。命を削って死ぬ気で一本大傑作を書くなら、上手に休憩しながら、まあまあの水準のものをたくさん……いや、それとは違うか(笑)。でもやっぱり、心地よい環境で働きながら、結果的にそれがお店に関わる人みんなのプラスになるというのは素晴らしいことだと思いますね。
村山 そうなんです。あと大事なのが、飲食業界って昔から徒弟制度みたいなところがあって窮屈だし、新陳代謝がうまくいってない。ラッセのeコマースだって、スタッフ主導で始めて、それがあっという間に今月の売上の三〇%を占めるぐらいまで伸びた。彼女たちにとっても、自分の手で出した結果だからやり甲斐があるでしょう。
小川 それが結果的に売上の支えになってきてるという、それはすごくいい話ですね。
村山 もちろんeコマース事業の数値管理も自分たちでやってもらってます。もともと、店の財務諸表はみんなで見ているので、誰がどのくらいの給料をもらっていて、どこにいくらかかっている、なんてことを全員把握している。だから、一人ひとり責任者意識をもって事に当たれるんですよね。何年もかけて体質改善に取り組んできた結果、いますごく筋肉質な店になったと思う。やっぱり、フラットに話し合える環境を作るっていうのが一番大事なんじゃないかと思いますね。
小川 しいてミニマム運営のデメリットをあげるなら何でしょう。
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