季節感溢れるエンディング
最後に、『鬼平』のロケ地を語る上で欠かせない、エンディング映像の説明をします。
物語が終わり、ジプシー・キングスの演奏する「インスピレイション」に合わせて映し出されていく四季折々の景色。フラメンコギターの哀切な調べとあいまって、観賞後に豊かな余韻を与えてくれるこれらの映像も、京都周辺で撮られています。
そして、今回の『時代劇聖地巡礼』の取材ではその全ての撮影ポイントを回りました。そこで、それぞれの映像がどこでどう撮られたのかを解説します。
まず、門の枠の向こうにお堂が映し出され、初詣と思しき参拝客が行き交う映像。これは嵯峨野の清凉寺で撮られました。実際の門は巨大な楼門なのですが、それを上手くトリミングしてあります。
満開の桜の向こうに五重塔がそびえる映像。これは仁和寺です。御室桜と呼ばれる桜林の奥にこんもりと土が盛ってあり、その上に乗ると撮れます。
桜の枝の向こうに舟遊びをしている人々がいる映像。これは大覚寺です。大沢池に浮かぶ天神島から池の東岸方向にアングルがあります。映像はかなりの望遠で撮っているので、実際に目で見てみるとかなり異なる景色に見えるかと思います。
雨が降りしきる木造の橋。これは摩気橋です。先に述べましたように、今は橋脚が作り変えられているので景色は大きく異なります。
花菖蒲が咲き、その奥で池を眺める男女のいる映像。これは嵯峨野の梅宮大社にある「神苑」と呼ばれる庭園です。これもかなりの望遠で撮られているので、肉眼で同じアングルを探すのは困難かもしれません。
店先に朝顔を飾った茶店が並ぶ参道。これは今宮神社です。古くから続く「あぶり餅」の店が向かい合っていて、それをそのまま使っています。
初期シリーズに登場する、紅葉越しに映る木造の橋。これは橘橋です。宇治公園から平等院鳳凰堂に向かう途中にかかっています。今は形状は同じですが金属製になっているので、質感は随分と失われました。
橘橋に代わり後期のシリーズやスペシャル版で登場する、紅葉の中に鎮座する櫓。これは東福寺の通天橋です。その対面にある臥雲橋から撮ることができます。
なお、夏の花火と冬の屋台は松竹の撮影所で撮影されています。
『鬼平犯科帳』は京都周辺のロケーションの力を妥協なく存分に使ったからこそ、池波正太郎の描いた豊かな江戸情緒を映像化することができました。
五月十三日は、それを成し遂げた能村庸一プロデューサーの命日になります(二〇一七年没)。この機会にぜひ、ワンカットごとに贅沢に撮影された『鬼平』のロケーションを堪能していただき、能村プロデューサーの偉業に想いを馳せていただけたら――と思います。
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