- 2021.10.07
- インタビュー・対談
ステイホームのお供に! 2021年上半期の傑作ミステリーはこれだ!【海外編&まとめ】<編集者座談会>
「オール讀物」編集部
文春きってのミステリー通編集者が2021年の傑作をおすすめします。
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#エンタメ・ミステリ
【中国本土のノンストップ・サスペンス】
A では、この流れで紫金陳さんの『悪童たち』に行きましょう。Nさんの話にあったように、紫さんといえば、中国に何人かいる“中国の東野圭吾”と呼ばれる作家の1人。『容疑者Xの献身』(文春文庫)に感激してミステリー作家を志した人で、昨年末の座談会で紹介した『死亡通知書 暗黒者』(稲村文吾訳/ハヤカワポケットミステリ)の周浩暉さんと並ぶ売れっ子作家です。彼らの作品は次々にドラマ化されて大成功しているところに特徴があるんだけども、その作品群の中で見ても、この『悪童たち』は特に東野圭吾感が強い1作と言えます。
あらすじを紹介しますと、3人の子どもたちが偶然に撮影したビデオの中に、殺人の瞬間が映りこんでいた――という話なんですね。子どもたちには複雑な事情があって、主人公の男の子・朱朝陽(ジュー・チャオヤン)は、背が伸びないことに悩んでいる、一見どこにでもいる成績優秀な中学2年生なんですけど、彼の家にある日、孤児院を脱走した小学校時代の友人が妹分の女子をつれて「水を飲ませてくれ」と逃げ込んでくる。結局、朱朝陽は、2人を自宅に匿って暮らすことになるんですね。彼の家は両親が離婚した母子家庭で、お母さんもあまり帰ってこなくて、子どもたち3人が共同生活をおくる中で、たまたま山登りの際に撮ったビデオ映像によって殺人事件の真相を知ってしまう。3人は、自分たちが生き延びるために、ビデオに映っている殺人犯を脅迫して金を得ようとするのですが、さらにとんでもない事態が発生して……。
KU めちゃくちゃ面白かったです! 少年たちが坂道を転げ落ちるように世界のダークサイドに飲み込まれていく様は、まさに『白夜行』(集英社文庫)。容赦ない残虐さと、荒削りなほどにスピーディーな展開は、独特な中毒性があります。後半になると、ある地点で物語の色合いが少し変わる。そこから彼らの切実さがいちだんと増していくところも読みどころですね。読者へのサービス精神に富んでいて、魅力的な書き手だなと思います。
N 紫さんの小説は、翻訳では行舟文化から1冊、『知能犯之罠』が出ていますけど、それと比べても『悪童たち』はものすごく小説が上手くなっています。『知能犯之罠』は〈官僚謀殺〉シリーズの第1作、『悪童たち』はもう1つの〈推理之王〉シリーズの2作目なんですね。
A 〈推理之王〉シリーズ第1作『無証之罪』は、邦訳はないんですけど『バーニング・アイス―無証之罪―』というタイトルでドラマ化されていて、日本でも観ることができます。抜群に出来の良いドラマで、おすすめですよ。
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