![作家の羽休み――「第51回:凝り性な父と台湾茶」](https://b-bunshun.ismcdn.jp/mwimgs/b/0/1500wm/img_b0aad69d732b66a850cefa5b34713dc5109022.jpg)
「第43回台湾の思い出」のコラムに書いたように、私は一度だけ家族と台湾へ旅行に行ったことがあります。何度思い返しても楽しい記憶しかない台湾ですが、楽しかったがゆえに、帰国してから後悔することもありました。
現地で頂いたお茶があまりに美味しかったので、お土産にたくさん茶葉を買って帰ったのですが、それもあっと言う間に飲み終わってしまったのです。カラスミと合わせて、「もっと買ってくれば良かったねえ」と母としみじみ語り合いました。
そうなってしまったのは、消費の目算が狂ったためでして、帰国してすぐに、毎日のように父が台湾茶を飲むようになったせいでした。
私の父は非常に凝り性です。
何か一つのものにのめり込むとそれをとことん追求し、自分の満足のいく領域に辿り着いた途端、満足してそれをしなくなる――ということが、これまでにも度々ありました。
特に食べ物に関しては顕著でして、一時期、チョコレートコーティングされたオレンジピールのお菓子、オランジェットにはまってそればかり食べていた時期がありました。ただ食べて満足するのではなく、「これは俺の理想のオランジェットじゃない……」と自分にとって至高のオランジェットを探し、かたっぱしから違うお店のオランジェットを食べまくっていたのです。最終的には、近所に住む私の友人のお父上(すごく料理上手)が作ったオランジェットが「一番理想に近い!」とのことで、その方にレシピを教わって自作するまでになりました。
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