キリスト教のビジネスモデルにおける絵画の役割
聖書が誕生して以来、クリスチャンは常に聖書を読んできたとわれわれは思っている。しかし、本書によれば、全然そうではなかった。聖書は権力者の独占物で、一般大衆は読んではならず、聖職者から聞かせて貰うものだった。
そこで宗教画が登場し、耳から聞いた聖書の物語を補強する。絵は比較的容易に複製を作れる。版画であればさらに簡単だ。また、物語を伝えることもできる。だから、キリスト教の布教にとって、重要な意味を持ったと想像される。
私は、キリスト教のビジネスモデルに強い関心を持っている。なぜ、あれほどの成功を収められたのか? その理由は学校制度(修道院)にあるとこれまで考えていたが、もう一つの理由が見つかったように思う。
私はまた、仏教では仏像は多いのに絵画が少ないのはなぜか?と昔から不思議に思っていた。理由は、少なくとも平安時代まで、仏教は、大衆への布教より、権力者に受け入れられることを重視したからではないだろうか? 仏像は、複製を簡単に作ることができないし、物語を伝えることもできないから、大衆布教の補助手段としては、絵画に劣る。しかし、権力者の信仰の対象物としては最適だ。キリスト教と仏教の基本戦略の違いが、絵画中心主義と仏像中心主義というビジネスモデルの差をもたらした、とは言えないか?
こんなことを言えば、専門の歴史学者には一笑に付されるだろう。しかし、本書を読んで、こうした空想に誘われるのは楽しいことだ。
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