――物語の中には、「幻の一朝」とされる黄色い朝顔が出てきますね。
梶 花が咲いた例はあるんです。ただ、種が残らない。朝顔の研究者によれば、黄色と黒の朝顔というのは現在でも咲かせ方がわかっていないそうです。江戸時代の朝顔を写生した史料の中にも、いくつか黄色い変化朝顔が描かれているんですが、どのように作られたのかはわからない。一代かぎりで、次にいつ出現するかは誰にもわからないんです。
――そんな幻の花を夢見て朝顔栽培に燃えているのが、北町奉行所の同心というところも面白いです。
梶 可憐でちっちゃい朝顔のそばに、でかい、ボ~ッとしたやつがいるんです(笑)。この取り合わせが気に入って、主人公をひょろっと背丈の大きい人物にしました。
――興三郎が町をぼんやりそぞろ歩く様子とか、小料理屋でちょっとした酒肴をつまむところとか、さりげない描写がとても映像的で、印象に残ります。
梶 テレビドラマの時代劇が昔からとても好きだったんです。それこそ幼稚園の頃から時代劇を観ていました。一番はじめに記憶にある俳優さんというのが近衛十四郎さんです。松方弘樹さんのお父さま。この間、松方さんがそのお父さまの役(『素浪人月影兵庫』)をおやりになっていて、ウワーッ、似てるなあ、と感動したんですけど(笑)。最近では、やっぱり『鬼平犯科帳』が大好きで、その次が『御家人斬九郎』でしょうか。……すいません、ただのミーハーなファンみたいで。
――いえいえ、オール讀物は『鬼平』の発表媒体ですから(笑)。
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