――今後は、どういう作品をお書きになっていきたいですか?
梶 一貫してあるのは、人間を書いていきたいという思いです。今みたいに嫌な事件が続くと、子供が携帯電話を持って歩かなければならないような社会はどうなんだろう? 昔はよかったなあなどとつい思ってしまうんですが、どんなに時代が変わり、社会が変わっても、変わらない人間の営みというのが必ずあると思うんです。
――幕末の激動の中でも、朝顔を愛でる人の営みは変わらなかった、ということですね。
梶 そういう確信があります。若い方が、「へえ~、江戸時代も楽しそうかもね」と思ってくれるような物語が書けたらすばらしいですし、あるいは逆に、今の人たちの感性をそのまま江戸に持っていっても面白いと思います。江戸時代にも、とんでもない趣味人が多くいましたが、今回の朝顔同心もアキバ系のオタク青年からヒントを得ていて、朝顔に夢中で、他が見えない、空気が読めない、とにかく人の話を聞かない人物にしています(笑)。
――お見合いの席で滔々(とうとう)と朝顔の話をして、気味悪がられたり……。
梶 そんな興三郎が、人との出会いによって変わっていく。そういう人間のありようは、江戸時代だろうが現代だろうが変わらないと思うんです。
(「オール讀物」2008年6月号掲載)
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