そして驚異的なのは、AIは今なお進化を続け、そのような芸術的な手を打ち始めている、という点です。局面では簡単なミスをしても、常に大局を見ている、つまり究極の人間とも呼ぶべきAIまで登場している。これは既に攻略されきった将棋やチェスの世界では、考えられないことでしょう。囲碁がいかに他のゲームとは違った奥深さを持っているか、ということです。
囲碁は勝敗がつくゲームですが、しかし打つ手によって何ものでもないただの石が生きたり死んだりする、そこに感動がある芸術でもあります。繰り返しになりますが、力量のない人が簡単に理解できる世界ではないし、私自身はそれでいいと思っています。しかし囲碁を愛する者にとって、囲碁は何にもまして素晴らしいものなのだ、と思うことは、決して不遜なことではないと思います。百田さんは囲碁を愛する作家で、その気持ちはこの作品の隅々にまで表れています。また、さすが現代を代表する作家ですから、囲碁をまったく知らない人が読んでもその魅力が十分に伝わるように書かれており、読者は、その深遠な世界と、幻庵をはじめとする棋士の壮絶な人生に触れ、果てしないロマンを感じることと思います。
私は一人の碁打ちとして、このような作品を書いて頂いた百田さんには、感謝の念しかありません。そして願わくは、この小説が江戸時代の囲碁棋士たちを知り、現代へと脈々と繋がる囲碁の歴史を知るバイブルにもなって欲しい、と思います。
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