だんだんと春めく外にはこぼれゆく梅、ほころぶ桜、畑を埋める薺の群生、迫り来る花粉、恋する猫のわめき声、そして家の中には現実逃避にいそしみ苔テラリウムに水をやる作家――という、のどかな光景がここに広がっています。
最近、苔テラリウムの置く位置を変えたら、とっても調子がいいのですよ! 前回苔テラリウムについてコラムで書いた時から、新作を2つお迎えしているのですが、容器ごとに乾燥の度合いが違うので水やりをいっぺんに出来ずにいます。でも、調子のいい苔と見比べることが出来るので、以前より調整はうまくいっている気がするんですよね。最初の子は水をやりすぎて調子を崩してしまったのです。以前、初心者が猫を飼う際は2匹のほうが体調の変化が分かりやすいという話を聞いたことがあるのですが、それに近いものがあるかもしれません。
前はレースカーテンを引いた窓際に苔テラリウムを置いていたのですが、今は仕事机の上に3つ並べています。家の中は洞窟の中と同じくらいの光量であり、こもれび程度の光のほうが苔にはいいと聞いていたので窓際に置いていたのですが、気温の上下が激しく、太陽光が思っていたよりも強かったようで、それよりも机のほうが条件は安定しているみたいです。
いやあ、それにしても緑は心を豊かにしてくれますね! 美しいテラリウムには小さな異世界が広がっているようで、いつまでも見ていられます! もっと増やしてもいいくいらいです。出来ればずっと見続けていたい。現実には帰りたくない。
そんな感じで春を過ごしております。
三寒四温の季節の変わり目、皆さまも体調にはお気をつけて!
阿部智里(あべ・ちさと) 1991年群馬県生まれ。2012年早稲田大学文化構想学部在学中、史上最年少の20歳で松本清張賞を受賞。17年早稲田大学大学院文学研究科修士課程修了。デビュー作から続く著書「八咫烏シリーズ」は累計130万部を越える大ベストセラーに。松崎夏未氏が『烏に単は似合わない』をWEB&アプリ「コミックDAYS」(講談社)ほかで漫画連載。19年『発現』(NHK出版)刊行。現在は「八咫烏シリーズ」第2部『楽園の烏』を執筆中。
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