これで、一段落です。

 やれやれ無事に終わって本当に良かった! 後は帰りの電車の時間まで打ち合わせするだけだな、と私が胸を撫でおろしていると、カメラマンさんが急にこう言い放ちました。

「じゃあ、次は阿部さんですね」

「え?」

「え?」

「……え?」

 私は己の耳を疑い、編集さんを見ました。

「あれ? 今日って私ピンの撮影あるんでしたっけ?」

 編集さんは鉄壁の笑顔で言います。

「『烏百花 白百合の章』のための宣材写真を撮る予定ですよ」

 すっかり忘れていました。

 飼い主バカの私は、「猫チャンさえ映えればそれでよかろう!?」と思って、茶トラが綺麗に見えるよう、暗い色のブラウスしか用意していなかったのです。なんとかそれっぽい服を見つけるために、家中の箪笥を急いでひっくり返す羽目になりました。

 蓋を開けてみれば、猫には全く問題はなく、戸を閉め忘れていたり、撮影時に筋肉のないボディービルダーみたいな体勢になっていたり、自分の撮影の予定を忘れていたりと、飼い主のほうがよっぽど問題な撮影だったのでした。

 ちなみに、ニャアが我が家に馴染むまでを書いた99%実話のエッセイ風小説は、4月22日発売の『オール讀物』5月号に掲載されます。ここで撮った写真も載っているはずです。もしよろしければ、手に取ってご覧になって頂ければ幸いです!

阿部智里さんとニャアのツーショットは、4月22日発売の『オール讀物』5月号に掲載されます

撮影:深野未季/文藝春秋


©阿部智里

阿部智里(あべ・ちさと) 1991年群馬県生まれ。2012年早稲田大学文化構想学部在学中、史上最年少の20歳で松本清張賞を受賞。17年早稲田大学大学院文学研究科修士課程修了。デビュー作から続く著書「八咫烏シリーズ」は累計130万部を越える大ベストセラーに。松崎夏未氏が『烏に単は似合わない』をWEB&アプリ「コミックDAYS」(講談社)ほかで漫画連載。19年『発現』(NHK出版)刊行。現在は「八咫烏シリーズ」第2部『楽園の烏』を執筆中。

【公式Twitter】 https://twitter.com/yatagarasu_abc

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