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作家の羽休み――「第47回:意外と身近なカワセミ」

作家の羽休み――「第47回:意外と身近なカワセミ」

阿部 智里


ジャンル : #エンタメ・ミステリ

 私の故郷である群馬には、色々な動物がいます。

 実家があるのは赤城山の裾野なのですが、周囲にあるのは畑ばかりで、森林が近くにあるわけではありません。野良猫や野犬、とんび、雉、タヌキ、害獣指定されているアライグマなどがいるのはまだ分かるのですが、時々、「えっ、こんな所に!?」と思うような生き物を目にすることがあります。

 特に、見る度に一日ハッピーな気分になれるのが幸せの青い鳥、カワセミです。

 緑の宝石の翡翠(ヒスイ)は、どちらの漢字もカワセミのことを指しますが、金属的な緑の光沢を帯びたブルーの羽は、宝石以上に素晴らしい輝きを持っています。

 私が最初にカワセミを見かけたのは、確か小学4年生の頃のことです。

 この辺りでは他に移動の手段を持たない小学生が遊ぶ際には、必ずと言っていいほど自転車を用います。その日も友人と一緒に、愛車をぶいぶい言わせながら図書館に向かっていました。

 大きな水場を持った公園の横を通った時、その水場に流れ込む水路に、オレンジ色の何かがいるのを見つけました。あまりに鮮やかなオレンジに驚いてブレーキをかけた私は、一拍おいて、その背中の色が目の醒めるような青色をしていることに気付いたのです。

「カ、カワセミだ! カワセミがいる!」

 思わず叫ぶと、隣にいた友人も「ええっ!?」と声を上げて自転車を止めました。

 道と水路の間にはフェンスがあり、カワセミまでは結構な距離がありましたが、光に反射する小鳥の美しさは遠目でもよく分かりました。もっと近くで見たい! と慌てて二人でフェンスを回り込みましたが、水路に近付いた時、カワセミはすでに姿を消していました。

 イメージ的に、もっと山奥の静かな湖畔とか小川とかにいるものと思っていましたので、自分達がよく遊ぶ公園のコンクリートで固められた水路にカワセミがいるとは全く想像もしておりませんでした。

「こんな所にいるんだなぁ……!」

 感動と意外性に打ち震えていた私でしたが、それ以来、「もしかしたらカワセミがいるかも」と期待して水場に目を向けるようになりました。その心がけのおかげかは分かりませんが、以来、田んぼ用の水路などに青い影をたまーに見かけるようになりました。

自然豊かな群馬のご実家近くにて撮影 ©文藝春秋
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