ホームズの末裔たち

A　ホームズ譚の土台に何があるのか。作者や時代背景に焦点を当てて、原流を辿っていく面白さが『探偵コナン・ドイル』にはありますよね。そうして生まれた「ホームズ的なるもの」は、現在に至るまで、時代をこえて脈々と受け継がれているわけですが、その結果、日本ではいま、こんなことになってますよ、というひとつの作例が、円居挽「キングレオ」シリーズだと思うんです。

円居さんの作品を読んでいつも思うのは、ホームズフォーマットの強さです。汎用性があって、いろんなものを詰め込めるし、どんなふうに色づけても輝く。「キングレオ」シリーズは、毎回、ホームズの正典から1話選んで、オマージュ的な事件が起こるのがお約束なんですけど、そのシリーズ最終巻の連載が「別冊文藝春秋」で上半期に終わりましたので、ここで紹介できたらと。

司会　少し補足しますと、「キングレオ」は円居さんのホームズ本歌取りであると同時に、清涼院流水さんの「JDC」シリーズ（『コズミック』『ジョーカー』『カーニバル』など。日本探偵倶楽部に所属する多くの探偵が活躍する）へのオマージュでもあって、警察とならぶ日本探偵公社という全国組織があり、探偵も捜査権をもっていて、警察と連携して難事件を解決しているという基本設定です。その日本探偵公社の本社が京都にあり、いちばんの名探偵がキングレオなんですね。京都の魅力、探偵公社という組織の面白さ、ホームズ愛をミックスしたシリーズといえます。

A　短編のタイトルを紹介すると円居さんのホームズ愛がよくわかるんですけど、最新シリーズだと、たとえば「町屋の冒険」「ふな屋敷」「性根の曲がった男」など（笑）。これらが1冊にまとまって、11月、文春文庫より『キングレオの帰還』が出ます。『キングレオの冒険』『キングレオの回想』と続いてきたシリーズがいよいよ完結。ミステリーファン、ホームズファンはぜひ愛でていただければと思います。

司会　このシリーズ、バディものとしても抜群に面白いですよね。

A　本家同様、ホームズにあたるキングレオが失踪してしまうんですけど、相棒の助手は心の傷を癒やすために、なんと「AIキングレオ」を作ってしまいます（笑）。最終巻はそこから始まって、AIと本物のキングレオとが推理バトルを繰り広げることに！

【ホームズ・オマージュには「女子バディ」ものも！】