- 2021.10.07
- インタビュー・対談
ステイホームのお供に! 2021年上半期の傑作ミステリーはこれだ!【海外編&まとめ】<編集者座談会>
「オール讀物」編集部
文春きってのミステリー通編集者が2021年の傑作をおすすめします。
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#エンタメ・ミステリ
【超絶技巧が炸裂する「逆順」ミステリー】
司会 Nさん、せっかくなので、ディーヴァー上半期の話題作についても、ひと言。
N ジェフリー・ディーヴァー『オクトーバー・リスト』(土屋晃訳/文春文庫)。文春の本なので軽く紹介しますけれど、最終章である36章から物語が始まり、35章→34章→33章……と遡っていって、最後、第1章で終わるという「逆順」で書かれたミステリーです。冒頭、娘を誘拐された女性が犯人との取引に向かった仲間を待っていると、そこに誘拐犯がなぜかやってきて、銃を向けられるところで章が変わるのですが、時間が巻き戻って34章になってしまうので銃を向けられたあとどうなったのかは描かれない。その後もひたすら時間が「その前」へと戻って、そのたびに隠されていた設定が明かされるので、本のカバーの「あらすじ」を書くのがもう大変で(笑)。
「あらすじ」らしい「あらすじ」もないし、構成上どうしても状況説明のないまま前の時間軸へと繰り上がっていくので、一読、「読みにくい」と思われる方もいらっしゃるようです。でも、細かなことは気にせずにどんどん読み進めて大丈夫です。ディーヴァーさんは世界一巧いサスペンス作家なので、読んでいるうちに「あ、そういうことか」とわかる仕組みになっていますし、最後の3~4章で大いにビックリしてもらえるはずです。
ちなみに、第1章まで辿り着いて本文の幕が閉じた後は「著者まえがき」→「謝辞」→「目次」と進み、ここまでは原書と一緒なんですが、日本版にはさらに巻末に、阿津川辰海さんの解説が「日本語版への序文」として入っています。その解説も、5→4→3……と、節が逆順に進む、凝りに凝った作りになっています(笑)。
H 道尾秀介さんの『いけない』(文藝春秋)を担当した者としては、本書の章扉の裏に写真が入っている点にも注目です! 『いけない』もまた本文中に地図や図版、写真が入るミステリーなのですが、『いけない』の場合、物語と本文中のビジュアルが密接に関連し、重要な伏線になっていたり、物語の意味が反転したり、図版もミステリーの根幹をなす重要な要素なんですね。いっぽうこの『オクトーバー・リスト』では、小説を読み終えた後、「目次」で写真の題が明かされるのが「答え合わせ」みたいで面白く、もういちど本文に戻って、1つ1つ、写真の持つ意味を確認していくボーナストラック的な楽しさもあるなぁと感じました。
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