本の話

読者と作家を結ぶリボンのようなウェブメディア

キーワードで探す 閉じる
作家の羽休み――「第55回:八咫烏シリーズ短編『きらをきそう』について」

作家の羽休み――「第55回:八咫烏シリーズ短編『きらをきそう』について」

阿部 智里


ジャンル : #エンタメ・ミステリ

 先週5月20日に発売となった『オール讀物』6月号に、八咫烏シリーズ短編「きらをきそう」を寄稿させて頂きました。

 第二部が始まってから、短編発表時に付けて頂くイラストは鈴木雉子さんに描いて頂いております。毎度「そこを切り取ってくるのか!」という視点で、その場の空気すら感じられるような絵を見せて下さるので、短編を書く際の楽しみとなっています!

 既にお読み下さった方には分かって頂けると思うのですが、今回も場面の切り取り方が絶妙で、めちゃくちゃ素敵なイラストなんですよ……! もっと派手で見栄えするであろうシーンは他にもあると思うのですが、今回の主人公のターニングポイントとなる瞬間をバシッと捉えて表現して下さっています。一目見た瞬間に「おお、すごい!」と声が出ました。鈴木雉子さん、いつも素晴らしいイラストを本当にありがとうございます!

オール讀物6月号掲載 ©鈴木雉子

 八咫烏シリーズは、たくさんのクリエイターのお力を借りながらビジュアルイメージを形成しており、時にそういった絵のイメージから影響をもらうことがあります。

楽園の烏』では名司生さんに鬼灯型の灯籠を裏表紙に描いて欲しくて作中の季節をずらしましたし、今回の「きらをきそう」も、コミカライズのオリジナル部分から刺激を受けて書くことになりました。

 松崎夏未先生によるコミカライズ『烏に単は似合わない』3巻収録の第24話「炳(へい)として」では、原作ではさらっと数行で流してしまった内容を膨らませ、圧倒的な描写力で数ページに渡って表現されています。つまり、遊女であった白珠の祖母が北家当主の妻におさまり、どう生きてきたのかをリアルタイムで見せてくれたわけです。

©松崎夏未/講談社 コミック『烏に単は似合わない』第3巻より

もともと、あの部分を見る度に「はー、このシーンすごいな~! 私も負けてられないな~」とは思っていたのですが、単行本化の際に「凌霄太夫(のうぜんだゆう)」の名前を出すことになり、本格的に「あ、これは小説のほうでも一本書くことになるかも」と予感しました。

 ただ、その後何度か遊女の短編を書こうという話が持ち上がっても、この予感はうまいこと作品として立ち上がってくれませんでした。何かピースが抜けているのかもなぁと思っていたのですが、ここでも松崎さんとの会話が助けになってくれました(笑)。

オール讀物2022年6月号

 

文藝春秋

2022年5月20日 発売

この作品の特設サイトへ
この作品の特設サイトへ
文春文庫
猫はわかっている
村山由佳 有栖川有栖 阿部智里 長岡弘樹 カツセマサヒコ 嶋津輝 望月麻衣

定価:759円(税込)発売日:2021年10月06日

単行本
追憶の烏
阿部智里

定価:1,650円(税込)発売日:2021年08月23日

単行本
烏百花 白百合の章
阿部智里

定価:1,650円(税込)発売日:2021年04月26日

単行本
楽園の烏
阿部智里

定価:1,650円(税込)発売日:2020年09月03日

文春文庫
烏百花 蛍の章
阿部智里

定価:781円(税込)発売日:2020年09月02日

文春文庫
弥栄の烏
阿部智里

定価:825円(税込)発売日:2019年05月09日

文春文庫
玉依姫
阿部智里

定価:814円(税込)発売日:2018年05月10日

文春文庫
空棺の烏
阿部智里

定価:825円(税込)発売日:2017年06月08日

文春文庫
黄金の烏
阿部智里

定価:814円(税込)発売日:2016年06月10日

文春文庫
烏は主を選ばない
阿部智里

定価:814円(税込)発売日:2015年06月10日

文春文庫
烏に単は似合わない
阿部智里

定価:858円(税込)発売日:2014年06月10日

文春文庫
発現
阿部智里

定価:792円(税込)発売日:2021年08月03日

プレゼント
  • 『赤毛のアン論』松本侑子・著

    ただいまこちらの本をプレゼントしております。奮ってご応募ください。

    応募期間 2024/11/20~2024/11/28
    賞品 『赤毛のアン論』松本侑子・著 5名様

    ※プレゼントの応募には、本の話メールマガジンの登録が必要です。

ページの先頭へ戻る